常念山脈(長野) 燕岳(2763.0m) 2024年5月18日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 2:23 第一駐車場−−2:30 中房温泉−−4:29 合戦小屋−−4:43 合戦ノ頭−−5:18 燕山荘−−5:42 燕岳 6:56−−7:13 燕山荘−−7:34 合戦ノ頭−−7:39 合戦小屋−−8:51 中房温泉−−9:02 第一駐車場

場所長野県安曇野市/大町市
年月日2024年5月18日 日帰り
天候快晴
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場有明荘付近の3箇所に登山者用駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無無し
冬装備6本爪軽アイゼン
山頂の展望文句なしの大展望
GPSトラックログ
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コメント今シーズン2回目のアルプスは燕岳。爺ヶ岳南尾根よりは雪は多いが安全な箇所しか雪が無いし、既に小屋が営業していて登山者が多くトレースがしっかりしているので軽アイゼンのみでOK。登山道も文句なしの良さで歩きやすい。予報では強風だったが思ったよりは風は強くなく、それほど寒さは感じなかった。乾燥した西寄りの風で空気の透明度が高く、日光白根と袈裟丸連峰、赤城山が良く見えていた。木曜日に新雪が積もって槍は白さを増していた。すれ違った登山者は100名弱で駐車場は第三を除き満車だった


標高2700m付近から見た燕岳。この時期は既に夏山の光景になっている


第一駐車場の入は6,7割程度 登山案内所。照明は自動点灯する
中房温泉登山口(標高1450m) 登山口の公衆トイレ。照明は自動点灯する
第一ベンチ(標高1670m) 第二ベンチ手前の荷上げ用ケーブル
第二ベンチ(標高1542m峰) 第三ベンチ(標高200m付近)
安曇野、松本の夜景 標高2100m付近で初めて雪が登場
富士見ベンチ(標高2210m付近) 4時25分の東の空。日の出直前
合戦小屋 標高2460m付近。ノーアイゼンのまま登った
日の出直後の大天井岳 4時41分に横手山の左から日の出
日の出直後の奥日光 合戦ノ頭の三角点。ここは雪が無い
合戦ノ頭から見た稜線 軽アイゼン装着
標高2530m付近 標高2550m付近で一時的に雪が消失。でもアイゼンを外す
標高2600m付近。ノーアイゼンで登った 標高2650m付近から見た燕山荘と燕岳
標高2650m付近から見た大天井岳 標高2650m付近から見た槍ヶ岳
水溜りが凍り付いていた 標高2650m付近で尾根上の冬道に移る
燕山荘裏に到着。西から回り込む 冬季小屋入口
燕山荘西側 燕山荘北側が玄関
燕山荘から見た燕岳 燕山荘テント場。全面が雪に覆われている
イルカ岩 新雪がまだ残っていた
標高2660m付近 メガネ岩
燕岳山頂 燕岳から見た槍ヶ岳
燕岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
燕岳から見た常念岳〜大天井岳
燕岳から見た立山、剱岳
燕岳から見た後立山
燕岳から見た後立山北部
燕岳から見た北信の山々
燕岳から見た西上州の山々
燕岳から見た奥秩父方面
燕岳から見た富士山、南アルプス
燕岳から見た穂高連峰 燕岳から見た笠ヶ岳。山頂だけが見えている
燕岳から見た硫黄岳。もう雪が少ない 帰りのイルカ岩
燕山荘を通過して本格的に下り始める 標高2550m付近でアイゼン装着
合戦ノ頭 合戦小屋でアイゼンを脱ぐ
バイカオウレン。ミツバオウレンは見当たらなかった 標高2290m付近で登山道が東へ曲がる
富士見ベンチ イワナシ
イワカガミ。まだ蕾も出ていない 第三ベンチ
刈り払いの跡。おそらく連休中か直後くらいだろう 第二ベンチ
第二ベンチのすぐ下のケーブル オオカメノキ
ミヤマカタバミ 冬道を下る。しばらくアイゼン不要
まだ蕾のマイヅルソウ。多数あり ツツジ
タチツボスミレ オオタチツボスミレ
中房温泉登山口 登山口の標識が新たな統一形式に更新されていた
中房温泉の道 登山相談所。無人だった
本家本元のスミレだと思う。一株だけあった マイヅルソウ
ツボスミレ ズダヤクシュ
ベニバナイチヤクソウの蕾 ノウゴウイチゴだと思う
登山者用第一駐車場
登山者用第一駐車場。満車だった


 シーズン初のアルプスは爺ヶ岳に登ったが、コロナの後遺症かいつもよりかなり疲れた。爺ヶ岳の標高差は北峰往復を含めて約1400m程度であり、現状ではこれを大きく越える標高差は厳しそうだし、本格的な春山装備で重い装備でも体力的に心配だ。そこで選んだのが燕岳。ここなら累積標高差約1400mで、この時期は雪があるが軽アイゼンで問題ない場所しか残っていない。というか登山道自体が最後を除いて尾根上に付けられているので、早い時期に雪が消えてしまうし、雪が現れる標高では傾斜は比較的緩やかである。よって残雪期でも気軽に登ることが可能だ。

 予報では今週末は好天が見込まれるがかなり暑くなりそう。しかし土曜日早朝の燕岳山頂の気温は+3℃、風は西の風が10m/sと強く、体感的には-7℃に相当する寒さであった。下界では既に最高気温が+30℃を超える状態での+3℃は冬場よりずっと寒く感じるだろう。そこで久しぶりにダウンジャケットを持って行くことにした。手袋は風を考慮して防寒テムレスである。先週はオーバースペックだったが今週は適度だろう。

 金曜日は早めに会社を上がって準備を済ませて出発。午後8時前に中房温泉下の登山者用第一駐車場に入った。この時刻では小屋泊まりの人の車がほとんどだと思うが、既に駐車場の6,7割が埋まっていてびっくり。小屋が営業していることもあって盛況である。端の日中でも日影になりそうな場所を確保して酒を飲んで寝た。さすがに人気の山だけあって夜中でもひっきりなしに車が上がってくる。私は2時半前に出発したが、この時点でも駐車場にやってきて仮眠準備中の車が2台ほどあった。

 朝飯を食って出発。空は満天の星空で快晴。まだ谷間なので風は感じない。気温は+10℃前後だろうか、長袖シャツにウィンドブレーカの姿でも体を動かしていれば寒さを感じなかった。今日は山頂での寒さを考慮して長ズボンで出発し、下山時のことを考えて短パンはザックの中だ。足元は長靴ではなく登山靴である(笑)

 歩き慣れた道なのでLEDライトでも不安は無い。無人の登山指導所は人感センサーで自動的に照明が点灯し、公衆トイレも同様であった。LEDのヘッドライトとは比較にならないほど明るい光だった。

 公衆トイレを通過して登山道へ。いきなりの急登で最初から足が重く、やはり通常の体調ではない。急ぐ必要はないので息が上がらない程度のペースで登っていく。体が温まって半袖+腕カバーに変身したが、急な登りでもこの格好なら汗をかかずに済んだ。下山時の暑さ対策で扇と濡れタオルを持ってきたが、今回は登りでも下りでも使わずに済んだ。これも湿度が低かった影響だろう。

 この登山道には休憩用のベンチがいくつかあり、第一ベンチは標高1670m小鞍部に、第二ベンチは標高1542m峰、第三ベンチは標高2000m付近、富士見ベンチは標高2210m付近だ。当然ながら今の時間帯はどこも無人で静かだが下山時には大いに賑わっていた。私の場合はこの程度の山では途中で休憩はしないためベンチは全て素通りだ。樹林の隙間から時折安曇野、松本市街地の明かりが見えた。

 富士見ベンチを通過して少しくらいで前方に明かりが見えてびっくり。この時期でも夜中に出発する人が私以外にもいたとは。まだライトが必要かギリギリの明るさの時間帯であった。この人が展望が開けた場所で写真撮影している間に追い越した。

 午前3時半を回ると東の空が少しずつ白み始めるがまだ周囲はまだ真っ暗でLEDライトが必要。ライト不要な明るさになったのは午前4時過ぎであった。志賀高原の山々から太陽が顔を出したのは午前4時40分頃であった。

 雪は標高2100m付近から断続的に出てくるが、まだ距離は短く気温が高くて雪が緩んでいるためにアイゼンは不要。合戦小屋の手前から雪が長く続くようになるが、まだ傾斜が緩いし登りなのでノーアイゼンで登っていく。合戦小屋の周囲は除雪したようで雪は無いが、これより上の斜面はかなり雪が残っている。昨年はここでアイゼンを付けたが、今年は登山道の雪面が前日のトレースで適度に荒れてグリップが利くのでノーアイゼンのまま歩くことができた。でも下りはアイゼンが必要かな。正確にはアイゼンが無くても歩けるが、アイゼン有の場合よりも歩行スピードは落ちるし無駄に筋力を使うだろう。

 合戦ノ頭(2488.2m三角点の肩)は雪が完全に消えているが、この先の稜線は例年通り雪が付いているのでここで軽アイゼン装着。少し風が出てきて稜線での風の強さが心配になると同時に寒くなったのでフリースの長袖シャツを着た。

 ここまで高度を上げると今の時間帯は雪は硬く締まってトレースは滑りやすい。逆にトレース以外の雪面はグリップが利いて歩きやすかったが、変な場所に足跡を残すのも気が引けるので素直にトレースを辿った。標高2550付近の急な雪面は、昨年と同様に燕山荘のスタッフが雪切りを行って雪に不慣れな人でも安全に歩けるようになっていた。小屋が営業しているとこんなメリットがあるのだった。

 標高2550m付近の急な雪面が終わると一度雪が消えるので軽アイゼンを脱いだ。まだこの先には雪に覆われたトレースが見えているが、傾斜が緩いので大丈夫だろう。その予想通りで傾斜が緩やかで前日の雪が緩んだ時間帯に付けられたトレースのおかげで問題なく通過できた。

 標高2650m付近で尾根東斜面を巻き始める夏道と分かれて尾根直上の冬道に乗る。この先はもう完全にアイゼンは不要である。ここで先行する2名を発見。さらに先に出発した人がいたとは。2人には小屋で追いついた。

 冬道は夏道と同等の濃さと整備状況で体に触れるハイマツは皆無だ。雪解け水の水溜りがカチカチに凍っていて、少なくとも地面は0℃以下まで冷えたようだ。左手に見えている槍ヶ岳は残雪期に似合わぬ白さで、明らかに新雪が積もっていた。どうやら木曜日の下界での雨がこちらでは雪になったらしい。この界隈でも雪が降ったようで、南向きの尾根でもハイマツの影には新雪がまだ残っていた。

 燕山荘裏手に出るが思ったよりは西風は強くはなかった。しかしこれまではほとんど感じなかった風が出てきて体感的には寒くなったが、長袖を着てからはちょっと暑いくらいだったのでちょうどよくなった。でも体を動かさなかったら寒いだろう。小屋泊まりの人はハードシェルを着ていた。

 小屋の北側の玄関に回り込んで燕岳山頂を目指す。例年通り小屋から山頂までの間は雪は少なく、ほとんど真っ黒である。ただしハイマツの影で見えないところに雪が残っている。小屋から見る限りは山頂は無人らしい。もう日の出から1時間ほど経過しているので当然かな。テント場は2張あり。この時期はテント場は全面雪の下であり、雪の上にテントを張るのでマットは断熱性の高いものでないと背中が冷たくて眠れない事態になる。ここの雪は遅くまで残るのであった。

 さすがに人数は少ないとは言え。小屋より先は人の姿が見えるしすれ違う人もいる。最初の人はイルカ岩ですれ違い。ここは最初に燕岳に登ったときには分からなかったなぁ。決まった角度から見ないとイルカに見えないのである。帰りには槍と並んで入るような位置から撮影した。

 山頂までの登山道のほとんどの区間は稜線の西斜面に付いているが、一部は稜線直上に付いていて、そこだけ20mくらい雪が残っていた。登り方向で逆に下りになっているので、硬く締まった雪は滑りやすく注意して通過。まあ、ここでコケても滑落するような場所ではないが。帰りは登りになるので通過しやすかった。めがね岩を通過すれば山頂への最後の登り。花崗岩と花崗岩が風化した白い砂礫の斜面はハイマツ以外は無いので展望が良く気持ちがいい。北アルプスではこんな風景はあまり見られない。

 最後の花崗岩を登り切った高みが燕岳山頂。今回は山頂は無人だったが、これが夏山シーズンだったらこうはいかないだろう。西寄りの風がやや強いが予報よりは弱くて寒さは予想以下だが、風を通すフリースの長袖だけではさすがに寒いので、風を通さないダウンジャケットを着た。これで寒さは全く感じなくなったのでまずは顔に日焼け止めを塗った。先週の爺ヶ岳では短時間だから大丈夫だろうと麦藁帽子だけで顔に日焼け止めを使わなかったら、数日後に酷い目にあったので今回は最初に処置。次に周囲の展望写真を撮影した。

 今日は空気の透明度が良く、志賀高原の向こう側に日光白根が見えていた。残念ながら尾瀬の山々は横手山〜岩菅山に引っかかって見ることができない。その代わりに四阿山の右側には袈裟丸連峰と赤城山が見えていた。奥秩父方面は国師ヶ岳〜三宝山〜十文字山付近が見えていて、その左には特徴的な両神山。八ヶ岳、南アルプスはきれいに見えていて、ここからでは深南部の加加森山が限界で、これより西側の山は中央アルプスに隠れてしまっていた。北アルプスは常念山脈、槍穂、裏銀座、五色ヶ原〜立山、剱岳、後立山南部と近くにずらりと並んでいた。ここからだと裏銀座が目の前だ。後立山は鹿島槍が大き過ぎて五竜岳〜杓子岳は隠れてしまい、白馬とその西隣の旭岳が見えていた。頚城山脈、戸隠連峰、黒姫山、飯縄山もきれいに見えている。この時期はまだ空気が乾燥しているので透明度がいいが、夏場だとこれだけ見えるのは珍しいことなので、HPで公開する展望写真用に高解像度で撮影しておいた。しかし残念なことにデジカメの異常で裏銀座方向の写真がおかしなことになってしまっていたのが残念だった。

 さすがに夏山シーズンと違ってこの時間に山頂を訪問する人は少数で、私が休憩した1時間で5人だけだった。姉妹で登ってきたと言う日進市の女性は就職先が斑尾山のスキー場ということで長野に詳しく、話が弾んだ。怪我の影響でしばらく山から遠ざかっていたのが、先週の木曾御嶽!が復帰戦だったとのこと。 リハビリの最初が御嶽で2回目が燕岳というのもすごい選択である。話を聞くと北アルプスには良く登るとのことだった。スピード的には私以上であり、愛知から近い南アルプス南部を薦めておいた。

 展望を堪能して下山開始。燕山荘まではすれ違う人はまだほとんどいなかったが、山荘を通過して本格的に下り始めると続々と登ってきた。おそらくすれ違った人数は総計で100名くらいだろう。真夏と比較すれば半分以下だと思うが、残雪期の北アルプスでここまで人が多いのはここだけだろう。冬靴にピッケルの人もいれば無雪期と同じくらいの装備の人もいた。まあ、私もその中の一人であるが。さすがに軽アイゼン(チェーンスパイク)を持っていない人はいないと思うが、ザックの大きさだけでは判断できない。ピッケルを持っていたのは全体の半分以下だったと思う。今はSNSで最新情報が見られるので、数本の記録を見れば状況が把握できるだろう。私の場合はこの時期に実際に登った経験があるので、最新情報を調べなくても残雪状況の予想が付く。

 標高2650m付近の雪切りされた雪面の手前で軽アイゼンを装着し、合戦小屋で軽アイゼンを外したが、その先も比較的長く雪が続いて、しかも溝のように掘れた登山道は日影になって雪が締まったままだったので滑りやすく、これが終わってからアイゼンを外した方が楽だった。

 雪が消えて以降の方がすれ違った登山者が多く、登山口に一番近い第一ベンチ以外は大盛況だった。下りの登山者を追い越したのは最初だけで、まだ多くの小屋宿泊者は出発前だったようだ。まあ、あれだけ天気と展望が良ければ早々に下山しようとは思わないだろう。

 登山口の中房温泉に到着してもこれから登り始める登山者の姿があり、駐車場に戻っても同様であった。ただし、満車状態から空きが出るためには私のように下山者が戻ってくる必要があり、空きはまだ数台程度であった。有明荘付近の駐車場案内には第一駐車場は満車と出ていたため、実際には数台の空きがあっても車道を上がってきた登山者には知るすべは無い。案内は無視して駐車場を実際に見るのがいいだろう。

 明るくなった帰りがけは花を探しながら下った。当然ながら森林限界以上ではシーズンが早すぎてまだ花は皆無。樹林帯に入るとまず発見したのがバイカオウレン。昨年までだったらミツバオウレンと誤認しただろうが、今は見間違うことは無い。この登山道ではミツバオウレンは皆無でバイカオウレンだけであった。さらに下るとイワナシが登場し、広範囲で多く見られた。ミヤマカタバミは一部エリアに固まって咲いていた。ショウジョウバカマが咲いていないか探しながら歩いたが発見できなかった。イワカガミも花はまだどころか花芽もまだ出ていなかった。中腹ではオオカメノキが花盛り。登山口近くまで下ってようやくスミレ類が登場。ここではタチツボスミレ、オオタチツボスミレだ。車道脇ではツボスミレが多く見られた。中房温泉で一株だけあったスミレはおそらくスミレ。ツボスミレとかと同列の種にスミレという種があるのだ。でも私の経験所上、これはあまり見かけない種である。マイヅルソウは登山道脇はまだ蕾だったが車道脇は開花しているものがあった。ズダヤクシュも車道脇で咲いていたし、ベニバナイチヤクソウの蕾も車道脇で発見した。こんなところにあったとは知らなかった。


 下山時の疲労は先週の爺ヶ岳よりは軽かった。先週は歩くだけでなく藪の刈り払いもやったので余分な体力を使った影響があったかもしれない。来週はもう少し標高差がある山にするか、ピッケルが必要な山にするかして負荷を上げて試してみよう。まあ、天気がどうなるかによるが。

 

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